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苦悩の根源 [気づき]

 私達は自己の状況を他人と比較したり望まれる状況にしようと考えるということで自分を苦しめているとは思いもしません。ここで考えるというのは”何とかしよう”とする自分のことです。

 考えて(=何とかしよう)苦悩を解決するはずなのに、考えないで(=相手にしない)どうして苦悩が解決されるのでしょうか。簡単にいえば、問題にすれば問題となるし、問題にしなければ問題にならないということになります。考えるということは考える対象と考える主体という二項対立という構造になります。二項対立になれば混乱・葛藤となります。

 禅では解けもしない問題を提示して意図的に考えさせる「公案」があります。自分自身が「考えている」ということに気づけば、「考え」は見られているので自分自身ではありません。気づいているのが本来の自己であり、気づかれている「考え」は本来の自己ではありません。対象(=考え)は自分自身ではありません。

 

 私達は事実よりも、思い(=こうあって欲しい)を主体としてるのではないでしょうか。あるべき姿に向かわせているのが主体である。なぜその主体が悩み苦しむのでしょうか。「思い」は主体ではなく、観察される客体です。「思い」は気づかれています。気づかれている「思い」は偽りの自己です。

何とかしようと考え続けることこそが「無明」。老病死は「苦」としてとらえる問題なのか、それとも至極当たり前のこととして受け入れるのか。「老い」を何とかしたい問題とすれば苦悩となります。どうして自分だけ病気で苦しまなければならないかと、問題にすれば悩むことになります。誰もが老いて病気になるのは当然だと

、端から承知していれば問題にはなりません。他人と比較したり、元気な自分であるべきだという思いに取り憑かれていると苦悩に陥ることになります。

 自分だけは自然法則を避けて生きられると思い込んでしまったり、自分(=偽りの自己)の思い通りになるべきだと考える続けてしまえば苦悩が離れていくことはありません。

 自分の思っている事と現実に起こっている事実が違っている。宇宙が間違っていて、自分の思いが通るべきだ。自然法則を否定しても自分の思いを通したい。狂おしいまでに”自分かわいい”が優先されてしまっています。「思い」を主体として生きてきたということが言わしめていいます。これでは、いつまで経っても苦悩がつきることはありません。”可愛そうな自分”と”救われるべき自分”が共演して人生を歩いています。

 

 無門関第一則に「趙州無字」があります。「有」の二項対立である「無」を思考によって探し出そうとします。勝手に作り出した概念である「仏性」がどこに有るのでしょうか。

 努力して天才になろうとしている犬や、理想に邁進する犬はいません。

 悟ろうとしている犬がいたら大変なことです。すでにあるがままの犬のままで完璧です。悩みのない「仏犬」になるような仏性など備わってはいません。そもそも迷っている犬はいませんので「無」です。人は習わずとも見聞覚知できています。気づきという意識が働いている完璧な生き物です。しかし、分別という二項対立によって自らが迷いの只中に自らを埋没させています。

 

 そもそもモノを言葉で説明できるというのが間違っているということに気づかなければなりません。モノと言葉を勝手に関連付けています。その言葉のほうが主役のように感じてしまっています。「梅干し」という言葉なのに、唾液がでてきてしまいます。言葉とイメージが結びついて、喜んだり悲しんだり苦しんだりすることが出来てしまいます。

 感情を言葉にして言ってくる実体のない自己(=偽りの自己)は、そもそも存在していなということに気づく。その自己(=偽りの自己)はどんな音調でどんな姿をしてどこに住んでいるのでしょうか。

 

「迷悟一如」:迷っている自分を立てて、迷いのない自分にしようと頑張る。迷っている自分を作り続けて、自分(=偽りの自分)が迷っていない自分を確認したい。自分(=偽りの自分)が「迷い」そのものであることに気づいて放ったらかしにする。自分(=偽りの自分・迷い)は相手にされないと無常によって消えていく。

 財布に入っている金額は、多くも少なくもないのですが他人の財布の中身と比較すると多くなったり少なくなったりします。悩みとしているのは自分自身です。比較したり何とかしたいという偽りの自己に気づくしかありません。何度も何度も偽りの自己を観察して同調しなければ、迷うことから遠ざかることができます。

 

<注:勝手な個人的な見解の部分がありますので、鵜呑みにせずに実証実験によって確証することをお願いいたします。引用もしくは酷似表現の場合は、タイトル及びアドレスの明記をお願いいたします。>


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