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思量-1 [阿含経]

「思量」

かようにわたしは聞いた。

ある時、世尊は、サーヴァッティー(舎衛城)のジェータ(祗陀)林なるアナータビンディカ(給孤独)の園にましました。

その時、世尊は、比丘たちに説いて仰せられた。

「比丘たちよ、わたしどもが何事かを思い、あるいは企て、あるいは案ずる。それが識によって存する条件である。その条件があるがゆえに、識が存するのであり、その識が存続し、増長するとき、未来にふたたび新しい有(存在)を生ずるにいたり、未来にふたたび新しい有を生ずるとき、また未来に老死・愁・悲・苦・憂・悩が生ずるのである。かくのごときがすべての苦の集積の生ずる所以である。

 比丘たちよ、もしわたしどもが、何事をも思わず、あるいは企てなかったとしても、なお何事かを案じるときは、それが識の存する条件となる。その条件があるがゆえに、識が存するのである、その識が存続し、増長するとき、未来にふたたび新しい有を生ずるにいたり、未来にふたたび新しい有を生ずるとき、また未来に老死・愁・悲・苦・憂・悩が生ずるのである。かくのごときが、このすべての苦の集積の生ずる所以である。

 だが、比丘たちよ、もしわたしどもが、何事をも思わず、何事をも企てず、また何事をも案じることがなかったならば、それは識の存する条件とはならない。その条件がないので、識は存続することがないのであり、その識が存続し、増長することがないのであるから、未来にふたたび新しい有を生ずることがない。未来にふたたび新しい有を生ずることがないのであるから、また未来に生も、老死も、愁・悲・苦・憂・悩も生ずることがないのである。かくのごときが、このすべての苦の集積の滅する所以である」

南伝 相応部経部12-38 阿含経典一巻 P161 増谷文雄著 筑摩書房

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 私達にどのような思いが浮かんでくるのか分かる人はいません。各個人が置かれている状況は異なり、次にどのような事象が起こるかの予測はつきません。意図的に自分に都合のいい事象を呼び込むこともできません。事象は勝手に起こって勝手に消滅しています。

 「思考する」ということは思考する対象が自身の「外」にあるということです。「外」にある事象をどうにかするために自動的に「思考」します。「思考」することで”私(=我)”が出現します。問題が「外」にあることで、自意識が自身の問題として解決しようとする癖があります。ある問題を解決するときに、辛酸を味わった過去と不安な未来なイメージを伴うことで自身を苦しめることになります。結果的に自身を苦しみから救うのではなく自らを苦しめるために「思考」しているのではないでしょうか。

 自身の脳内で自動的に「思考のループ」が行われ、ますます「苦しみ」が増すことになります。何度も繰り返される「思考」によって「苦しみ」が大きくなり記憶の傷となっているかもしれません。

 「思考」で解決できるというのは数学・物理・化学・・というインプットが決まれば自ずとアウトプットが決まるような単純なことだけかもしれません。人間の抱いている悩みを「思考」で解決しようとすれば、「問題(=対象)を消し去る」・「問題(=対象)から離れる」・「問題を無視する」・「何かに委ねる」「相手をコントロール(地位・金・暴力・権力・・)」・「アイデンティティによって自己承認」・・という解決方法から選ぶことになります。

 学校や社会で教わってきたことが個人の幸せのためであるのなら、誰もが幸せになってもいいのですが・・・。社会に貢献して社会を豊かにするためとか、社会に害を与えたら罰するというのなら個人よりも社会を守るための教えだということです。個人よりは集団維持のためのであったと疑われてもしかたありません。

 人類の歴史で偉大な思想家や哲学者が「思考」してきました。偉人と言われる人は「幸せな世界」を実現できるように努めてきた筈です。一部の人しか理解できないようなことだったのでしょうか。個々人の理解力が不足していたのでしょうか。

 個人にとって一番危険なのは「思考のループ」だと教えてくれる人はいませんでした。後輩の顔に硫酸をかけてしまうような事件が起こりました。この事件は「思考のループ」によって引き起こされたのでしょうか。「思考」した結果として選ばれたのが相手を傷つけるということでした。

 

 お釈迦様の発見された「苦の集積」に識(=心・意)の存続と増長があります。いわゆる「思考のループ」です。極端に言えば、社会全体が「思考のループ」が危険だという認識がまったく無いということかもしれません。社会に問題が起こると個人的な責任としてしまいます。

 阿含経は口伝での対機説法であり、さらに翻訳されたものなので真意を汲み取ることは難しいのですがなんとか実践したものです。

 

<注:勝手な個人的な見解の部分がありますので、鵜呑みにせずに実証実験によって確証することをお願いいたします。引用もしくは酷似表現の場合は、タイトル及びアドレスの明記をお願いいたします。>


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