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「体験」を伝える [気づき]

 禅僧であった、一休宗純と仙厓の最期に言い残した言葉は「死にとうない」だったそうです。禅僧であるからには、威厳や教訓となるような言葉を聞けると期待していた人には出鼻をくじかれたような言葉かもしれません。何十年も修行して我々と同程度なのかと思ったり、「死ぬのがこわい」「この世に未練がいる」とガッカリする人もいるかもしれません。

  「死にとうない」という言葉だけ取り上げれば、何も達成していないし人生にやり残したことが多くありそうに感じられるのも当然かもしれません。

 ポイントは考えて発した言葉なのか、身体(=たった今の体験)から発した言葉かということにあります。生死一如は「紙の表裏・明暗・正邪・・・」と同じで二項対立の言葉です。分けることのできない一体のことです。生と死はセットであり別々にすることはできません。頭は身体の一部であり、頭の働きである思考も私たちの一部です。それぞれが切り離すことができない働きです。一如は、一体ですが「生」と「死」が同じということではなく、「生」は「生」であり「死」は「死」であり区別はあります。

 

 私たちは、思考によって物事を成就しようとします。思考が優先されて身体は二の次だと考えてはいないでしょうか。日常の行動を観察してみます。思考が日常の行動のあらゆる部分を制御しているのではないと気づきます。それどころか、ほとんどの行動が思考せずにできています。思考によって立ったり歩いたりしていません。思考にしたがってどこかを見ているのではありません。勝手に聞こえたり見えたりしています。
 一生懸命に思考を使って歯を磨いてはいません。日々の行動が「私(=思考)」の指示によっているのでしょうか。気づけば、身体が勝手(=主)に動いているのではないでしょうか。身体がすべきことが実現されているというのが本当のところです。頭(=脳)で体調をどうのこうのできるものではありません。身体を安心・安全・快適にし体調を保ち良くしようとしています。頭(=脳)が主であり身体が従として行動しているわけではないと気づきます。只、辛いときに「なんとかしたい」という思いがあるので頭(=脳)が主として働いていると感じてしまいます。

 

 頭(=脳)が体調を制御しているわけではありません。体調(=身体)が頭を使わせているということではないでしょうか。心地よいことを求めたり、休息することは身体が要求しています。実に頭が身体に従っているということに気づかれると思います。
 問題は言葉や文字で提起されるので、答えも言葉や文字を使って出すようになってしまっています。思考によって答えを探し出しているのではないでしょうか。思考である心境に達したり何かを得ることができるでしょうか。それとも身体の解放感や五感からの感受に感動するのでしょうか。問題を解くというのは、問題が無くなる(=No problem)ということです。「1+1は?」と問われて悩むことはありません。「なんとかしよう」というのは必死に頭を使っていることです。お腹が空いたときに「なんとかしよう」と考えたところで、「絵に描いた餅」を食べることはできません。実際に食べ物を食べるという行動によって空腹を満たすことです。何だ考える前から、見えているし聞こえていることに気づきます。

 

 「香厳撃竹」というお話があります。何に気づいたかは書かれていません。頭で聞いて頭で何かを達成したり何かを得たのではないようです。思考で気づいたのではなく、思考以前に体験していること「それ」が「それ」だということに気づきます。「隻手の音声」も頭で聞こうとしても聞こえません。「隻手の音声」を頭で聞こうと考えている以前に、様々な音が聞こえていませんか。思考(=主だときめつけている)より以前に五感(=身体)で感受しています。思考で達成できたり得たりできるのなら、誰もが達成したり得たりできるようにできないような仏法は偽物だということになります。教えを説いていながら教えられないというのはどうしてでしょうか。個人的な体験を頭で理解して、同じ体験を得ることはできません。満腹成りたいからと言って「満腹」を1万回書いたり唱えて達成させるようなものです。

 

 もうお分かりかもしれませんが、思考して出した言葉に実体はありません。「辞世の句」はそれなりに体験を伝えることができます。絵に描かれた餅(=辞世の句)をどうやって食べればいいのでしょうか。身体が発する声は、身体の状況(=たった今の体験)を伝えることになります。「死にとうない」は頭で考えてひねりだしたモノではなく、「体験」そのものを伝えています。聞いていた人が「体験」そのものを受け取ることができていればいいのですが・・・・。

 

<注:勝手な個人的な見解の部分がありますので、鵜呑みにせずに実証実験によって確証することをお願いいたします。引用もしくは酷似表現の場合は、タイトル及びアドレスの明記をお願いいたします。> 

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