吾言甚易知、甚易行、天下莫能知、莫能行。
言有宗、事有君。夫唯無知、是以不我知。
知我者希、則我者貴。是以聖人被褐懐玉。


 


 私の言っていることは理解しやすく、簡単に出来ることです。しかし世の人は理解できず、また能く行う人はいない。私の言っていることには根拠があるが、人々は気づかない。人びとは無知であり、私の言う事は理解できない。私の言うことが理解できる人は稀であり、私の言う通り行動する人はいない。「道」に従って生きている聖人は、粗末な衣服を着ていても心には貴重な宝を抱いている。


 


<他の翻訳例>


私のことばはたいへん理解しやすく、行いやすい。それなのに天下にだれも理解できるものはなく、行うことができるものもない。(すべて)ことばには宗(おおもと)があり、物事(をなす)には君(主宰者)があるものだ。(人びとが)無知だからこそ、私は理解されないのである。私を理解するものはまれであるが、私に倣(なら)うものはとうとばれる。それゆえに、聖人は粗末な衣服をつけた下に(人に知られない)宝玉をかくしている。


「世界の名著 小川環樹 訳 中央公論社」小川環樹:京都大学名誉教授 中国文学者


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 「私は平易に説いていてるし実践することもたやすいのに、世間の人は理解できないし実践できない。」と嘆いています。君主であれば私の言うことを理解し実践することもできるとでも言いたいのでしょうか。


 人に清濁の区別があり、私は聖なる方に属している。凡人には理解できないし、君主に重用されるまでは粗末な身なりをしている。しかし、聖人は人知れず素晴らしい宝を持っている。


 「世の中の人は私のような聖人を見出して尊敬すべきではないか」と言われても・・・・。当時の人たちが余りにも物分りが悪く、辟易していたのでしょうか。書き残すほど悔しいことがあったのでしょうか・・・・。


 


<注:勝手な個人的な見解の部分がありますので、鵜呑みにせずに実証実験によって確証することをお願いいたします。引用もしくは酷似表現の場合は、タイトル及びアドレスの明記をお願いいたします。>