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老子−51 [老子]

道生之、徳畜之、物形之、器成之。是以萬物、莫不尊道而貴徳。道之尊徳之貴、夫莫之命而常自然。故道生之、徳畜之、長之育之、亭之毒之、養之覆之。生而不有、爲而不恃、長而不宰。是謂玄徳。

 

畜:やしなう

 

「道」が万物を生み出し、徳が万物を養い、物が形となり、器となる。この道理が理解できれば「道」を尊び、徳を貴ばなければならない。「道」が尊ばれ、徳が貴ばれるのは自然のことである。だからこそ「道」は万物を生み出し、徳が養い、万物を成長させ育てている。万物を結実させ成熟させて種を為す。万物を養い保護して万物を循環させているのだ。それでいながら「道」は万物を自分の物とせず、偉大な事をしてもその事に頼らず、万物の長であるのに取り仕切ったりせずあるがままにさせている。この「道」の働きは「玄徳」すなわち自然の働きという。

 

<他の翻訳例>

「道」が(すべてを)生み出し、「徳」がそれらを養い、物それぞれに形を与え、環境に応じて成熟させた。それゆえに、あらゆる生物はすべて「道」をうやまい、「徳」をとうとぶものである。だが、「道」と「徳」がうやまいとうとばれるのは、(何か権威のあるものから)任命されたからではなくて、それらはつねに自ら然(そう)なのである。こうして、「道」は生み出し、徳は養う。そして生長させ育てあげ、凝縮させ濃厚にし、食物を与えかばってやる。生み出しても、自分のものだと主張せず、はたらかせても、それにもたれかからず、その長(かしら)となっても、それらをあやつることをしない。これが「神秘の徳」とよばれる。

「世界の名著 小川環樹 訳 中央公論社」小川環樹:京都大学名誉教授 中国文学者

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 哲学の一部門である「存在論」を論じてたのでしょうか。古代ギリシャ以前は「存在は生き生きと変化し生まれ出る、自然に出てくる」ということのようでした。プラトン・アリストテレス・ デカルト・カント・ヘーゲルでは神秘的な力や神の力によって作られ、作られてあるというのが存在でした。20世紀最大の哲学者とい言われているハイデッガーは今まさにここに在る私を「現存在」と定義しています。「神」という超越的な創造主という概念を取り去り自然になり出てくるというところへ回帰したのでしょうか。

 また、存在者の中でも「私はなぜ在るか」と自分の存在を自分に問える特別な存在者(=人間)が「現存在」ということのようです。この自らの現存在によって、あらゆる他の存在を存在させている。認識する者がいなければ存在は無いということに気づいたのでしょうか。

 プラトンは、人間が存在していなくても「存在」は、存在し続けるという考え方のようでした。

 存在が「神」によって創造されたとすれば、一切の役割も「神」の意志で決められているということへと発展します。さらに自由意志の問題が起こってきます。

 存在を存在としてあらしめているのは、現存在である各自が存在に対して「存在」との関係性によって決められるということなのでしょうか。

 存在(=モノ)を徹底的に使い切ることでモノの存在としての価値と一体となります。だたモノと接するだけでなくモノが自身の一部であるとすれば一切は自身のように大切だと感じられるかもしれません。

 

 宇宙の根源であり名のないものをあえて「道Tao」と命名しています。「道」の働きは「玄徳」と命名しています。宇宙の根源(=道)から全ての存在が生み出されては消滅しています。現代ではエントロピー増大によってあらゆる存在は解体し消滅するということが分かっています。「道」には何らかの意志はなく為さずして為されているというところに落ち着いたのでしょうか。「存在」はどうして生じたのか、自分は何者なのか生きる意味はあるのかという問があります。新しい概念を定義して真剣に答えようとしている人がいます。

 「誰もいない森の中で木が倒れたら音がするか」という問いで音はしないということは周知の通りです。現存在がそこにいなければそこにあるであろう「存在」は、あるであろうという想像でしかありません。庭の小石でさえその場で観察しなければ「存在」としてあるだろうというただの想像でしかありません。超越的な「誰か」が存在してほしいというのが頭の中で描いている幻想でしかなく、その「誰か」に出会ったり声を聞いたりということはただわき起こってきた幻聴かもしれません。「誰か」の声を聞いたから世界を変えることもできるわけではありません。

 「神秘」ということも、神秘的に感じるだけであって人間の感受性の違いによって生ずる素晴らしい体験の一つかもしれません。

 

<注:勝手な個人的な見解の部分がありますので、鵜呑みにせずに実証実験によって確証することをお願いいたします。引用もしくは酷似表現の場合は、タイトル及びアドレスの明記をお願いいたします。>


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